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最高裁判所第三小法廷 昭和23年(オ)115号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高屋市二郎同河野太郎の上告理由は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。

第一点について。

按ずるに民事訴訟法第一四四条は口頭弁論期日に行うべき証人訊問においては証人の陳述を口頭弁論調書に記載すべきことを規定しているが従来の慣行として口頭弁論調書と題する調書に対し特に調書と題する別紙を以て証人調の転末を録取することが常である。しかしこれは唯執務者の閲覧の便宜の為であつて口頭弁論調書とは別個独立の調書ではなく口頭弁論調書の一部を為すものである、記録に徴するに昭和二三年三月一八日附口頭弁論調書と題する書面に続いて調書と題する書面(証人川辺藤吉の訊問調書)が編綴され両書面は契印によつて連結一体となつて口頭弁論調書が形成されていることが明らかである、そして右口頭弁論調書と題する部分には証人川辺藤吉の訊問がなされた旨の記載のないことは所論の通りであるが、右証人川辺藤吉が出頭した旨の記載があり且つ右口頭弁論調書と題する書面に続いて編綴され且つ契印によつて連結一体とされた調書と題する部分には裁判長は証人川辺藤吉を訊問した旨及び同証人の陳述内容が記載されているのであるから右両書面即ち口頭弁論調書により、前記口頭弁論期日において証人川辺藤吉の訊問がなされた事実が明らかである。要するに論旨は前記両書面を別個独立のものと解した為めに生じた誤りであつて、原判決は所論の如き違法はない従つて論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よつて民事訴訟法第四〇一条同第八九条同第九五条により主文の通り判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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